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交通事故の被害者が子供や学生の場合の逸失利益の計算方法

田中弁護士

「子供に後遺障害が残ってしまって、将来不安だな、、、」

自分の子供が交通事故に遭って、後遺障害が残ってしまったら、こんなふうに考えて、将来を悲観してしまう人も少なくないかもしれませんね。

しかし交通事故により後遺障害が残ってしまった場合、被害者の人が後遺障害によって失った利益を「逸失利益」として、賠償請求することができることはご存知でしょうか?

交通事故の示談金の項目の中でも、もっとも高額になる可能性が高いのが、この「逸失利益」なんですよ。

今回は、この後遺障害事故における逸失利益について、詳しく解説してまいります。

逸失利益はどのように算出するのか?

それでは、逸失利益の算出方法について、詳しく解説してまいります。

逸失利益の計算方法

逸失利益は、「将来得られるはずだった利益」です。しかし、将来のこと(利益)を正確に予測できるわけではありません。

また、それを交通事故の都度、考えるとなると時間がかかってしますよね。

そこで迅速に処理できるように、あらかじめ決まった計算式を用いて算出することになっています。

逸失利益の計算式は

年収 ×労働能力喪失率×中間利息控除係数(ライプニッツ係数)

それでは、この3つの要素

  • 年収
  • 労働能力喪失率
  • 中間利息控除係数

について、下記にて詳しく解説してまいります。

労働能力喪失率とは

「労働能力喪失率」は、後遺障害により、労働能力がどの程度失われたのか?を数値化したものです。

これは、後遺障害等級認定で受けた等級により決められます。

労働能力喪失表 (数値は、目安です)

等級

 

等級

 

等級

 

第一級

100/100

第六級

67/100

第十一級

20/100

第二級

100/100

第七級

56/100

第十二級

14/100

第三級

100/100

第八級

45/100

第十三級

9/100

第四級

92/100

第九級

35/100

第十四級

5/100

第五級

79/100

第十級

27/100

 

 

なお、これらの数値は、後遺障害の種類や、被害者の職業、実際の減収などにより変動します。

たとえば控訴になった場合、「後遺障害の具体的症状」「従事していた業務」など、別個の具体的な事情を考え合わせて、労働能力喪失率を認定することになります。

労働能力喪失表だけで決められないケースもある

同じ等級でも、後遺障害の症状は様々なものがあり、その症状が仕事へどのような影響が及ぶのかも、パターン化できるものではありません。そこで単純に、労働能力喪失表にあてはめるのではなく、下記のような事情も考慮して、労働能力喪失率が決まります。

①被害者の職業

②年齢

③性別

④後遺症の症状や程度

また、交通事故の前後で仕事にどのような支障が生じているのか、また収入がどのような変化したのか、についても重視されます。後遺障害は残ってしまったが、仕事には影響がなく、収入の減少は見られないケースでは、裁判で争われることもあります。

中間利息控除係数とは

逸失利益とは、将来の利益を先に受け取るものです。

ということは、それを運用したと仮定して得られる利息分(中間利息)を控除しないと、不公平になります。

分かりやすい例をいうと

①固定症状から5年で損失した金額が100万だとする。

②交通事故の損害賠償により、将来5年分の100万が手に入った。

③しかし100万円を元手に運用すれば、それ以上の利益を得ることもできる。

④したがって5年後には100万以上の利益を得ていたかもしれない。

この④のような利益を、あらかじめ差し引くために「中間利息控除係数」が設定されています。

中間利息控除係数の決定は、「ライプニッツ係数表」を用います。

ライプニッツ係数は、逸失利益の対象期間として認められた年数「労働能力喪失期間」に応じて算出します。

なお、この労働能力喪失期間は、一般に固定症状日の年齢から67歳までの期間を設定します。

たとえば、35歳で症状固定となったら、「67 - 35 」で32となる訳です。

労働能力喪失期間32年に対応する、ライプニッツ係数は「15.8027」です。

下記が、ライプニッツ係数表です。

表:中間利息控除係数(ライプニッツ係数)

喪失期間()

ライプニッツ

係数

喪失期間()

ライプニッツ

係数

喪失期間()

ライプニッツ

係数

喪失期間()

ライプニッツ

係数

1

0.9524

18

11.6896

35

16.3742

52

18.4181

2

1.8594

19

12.0853

36

16.5469

53

18.4934

3

2.7232

20

12.4622

37

16.7113

54

18.5651

4

3.546

21

12.8212

38

16.8679

55

18.6335

5

4.3295

22

13.163

39

17.017

56

18.6985

6

5.0757

23

13.4886

40

17.1591

57

18.7605

7

5.7864

24

13.7986

41

17.2944

58

18.8195

8

6.4632

25

14.0939

42

17.4232

59

18.8758

9

7.1078

26

14.3752

43

17.5459

60

18.9293

10

7.7217

27

14.643

44

17.6628

61

18.9803

11

8.3064

28

14.8981

45

17.7741

62

19.0288

12

8.8633

29

15.1411

46

17.8801

63

19.0751

13

9.3936

30

15.3725

47

17.981

64

19.1191

14

9.8986

31

15.5928

48

18.0772

65

19.1611

15

10.3797

32

15.8027

49

18.1687

66

19.201

16

10.8378

33

16.0025

50

18.2559

67

19.2391

17

11.2741

34

16.1929

51

18.339

 

 

労働能力喪失期間とは?

上記でも述べましたが、「労働能力喪失期間」について、補足します。

一般的には、労働可能な期間として67歳くらいまで、という前提をもとに算出されます。

労働能力喪失期間の計算式

労働能力喪失期間 = 67 - 症状固定日の年齢

なお、60歳近い人が被害者だった場合、余命年数の半分程の期間を稼働可能期間と設定します。

一方、18歳以下の人の場合は、67歳までのライプニッツ係数と、18歳までのライプニッツ係数を引いた数値を用いて算出します。

たとえば15歳なら

15歳〜67歳までに対応するライプニッツ係数:18.4181

15歳〜18歳までに対応するライプニッツ係数:2.7232

18.4181 - 2.7232

→15.6949

もっとも後遺障害の病状によっては、もっと短い期間で認定されるケースもあります

一応の目安ですが、むち打ち症で後遺障害等級14級と認定された場合は5年、同様にむち打ち症の後遺障害等級12級と認定された場合は10年となることが多いです。

子供や学生の基礎収入の決定は?

子供や学生の逸失利益を計算するにあたり、ポイントとなるのが、基礎収入の基準です。

示談で保険会社と交渉すると、この基礎収入を、低い賃金基準で算出されて、提示されることが多いのです。

そうなることを防ぐためにも、適切な賃金基準をおさえておくことが大切です。

それでは、適切な賃金基準とはなんでしょうか?

裁判では、

①高校生以下では、男女別・学歴計の賃金センサス

②大卒なら、大卒の賃金センサス

...を賃金基準として、基礎収入額を設定します。このことを忘れないでください。

もっとも、高校生では、もし大学進学の可能性が高いと認められれば、大卒の賃金センサスを基準にすることがありますし、大学生でも就職していた可能性が高いと認められれば、内定先の賃金を基準とすることがあります。

この、逸失利益は損害賠償項目の中で、もっとも金額が高くなることが多いので、一度弁護士に相談して、より高い金額を獲得できるように、準備をすることをお勧めいたします。

子供や学生の逸失利益の計算

子供や学生の場合、通常では平均賃金を参照して計算します。なお、このときに用いる平均賃金は、男女の全ての年齢の平均です。

「賃金センサス」による平均賃金(全年齢平均)を下記の通りです。

性別

平均年収

男性

549.43万円

女性

376.23万円

また、年少の女性の場合は、男女共通の平均賃金を参照します。

全年齢平均

平均年収

男女共通

489.86万円

次に、被害者が大学生の場合です。

大学生の場合は、大卒の平均賃金を基礎値に用いることがあります。平成28年の賃金センサスによる平均賃金は、下記の通りです。

大卒

平均年収

男性

662.61万円

女性

457.23万円

もしまだ大学に進学していなくても、大学に進学する確率が高いと認められた場合は、大卒の平均賃金を用いられることがあります。

なお、「大学に進学する確率が高い」と見なされる条件は、

①進学校に通っている

②本人や家族が大学進学を希望している

...などです。

ただし、計算に大卒の平均賃金を用いるより、学歴共通の平均賃金を用いた方が、金額が高くなる場合があるので、注意しましょう。

学生の逸失利益の算出例

逸失利益の計算式使って、実際に金額を算出してみましょう。

「年収 × 労働能力喪失率 × 中間利息控除係数(ライプニッツ係数)」

...でしたね。

.症状固定時点で15歳の学生、の算出例

15歳で交通事故により後遺症害が残った。

②後遺障害は第12級相当に認定された場合

③男性の平均賃金(5494300円)をもとに算出する

④労働能力喪失率=14%

14歳のライプニッツ係数=15.6949

5494300円 × 0.14 × 15.6949=12072548円が、逸失利益となります。

ただし、交通事故の内容や、被害者の年齢、後遺障害の程度、将来の回復見込みによっては期間が短縮される場合がある点は、忘れないでください。

高学歴の大学生なら逸失利益も高くなる?

ちなみに、もし交通事故に遭った学生の学歴が高かった場合、逸失利益も高くなるものなのでしょうか?

たとえば、

①名門大学の学生

②医学部生

③法学部の学生

...等です。平たく言えば、平均的な学生に比べて、将来高い収入を得られると見込まれる学生ですね。

過去の判例を見ると、交通事故に遭った医学生が、医師の年収を基礎収入として算出した、逸失利益を認められた事例があります。

それでは、法学部や名門大学の学生はどうでしょうか?

結論からいうと、一般の大学生と扱いは変わりません。名門大学だからといって将来、どんな企業に就職するのかは不確定要素なので、必ずしも名門大学だからといって、加算対象となる訳ではなく、普通の大卒の賃金センサスで算出されることが殆どです。

まとめ

研究

交通事故による逸失利益は後遺障害等級認定の有無や程度によって、もらえる金額が大きく変動します。また、子供や学生の場合は、大学に進学したり、就職する予定の有無により、金額が変動する場合があります。

適切な金額を得るためにも、交通事故の被害者の人は、しっかり知識を身につけ、準備をしておきたいところです。

もし、逸失利益のことについて悩んでいたり、ご不安がある場合は、弁護士に相談することを検討してください。

  • 子供や学生の逸失利益は、大学への進学や、就職する予定の有無により金額が変動する
  • 「賃金センサス」による平均賃金(全年齢平均)を計算の基礎値にする場合が多い
  • 労働能力喪失期間がどこまで認められるかが争点となりやすい
  • 子供が高学歴だから逸失利益に加算されるということはない

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